スポンサーサイト

--年--月--日
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

エコ・コースト

2008年03月25日
20080325.jpg

 週末の日曜日はいつものホームグラウンド、真鶴は琴ヶ浜へ潜りに行きました。日差しはすっかり春、大潮まわりでもあったので、磯が太陽に焼かれた香ばしいにおいが浜辺にひろがります。海ではすでに春にごりもはじまっており、役目を終えて朽ち果てた海藻も散らばっていて、海のなかはお世辞にもきれいとは言えませんが、この混沌とした海もごく自然のいとなみの一部です。しかしこの日の海には、海一面にひろがる朽ちたホンダワラに負けないくらいのゴミが、吹きだまりのように漂っています。くわえて赤潮の発生もあったようで、この日の琴ヶ浜はなにか雑然としていました。
 ここ10年間の工事につぐ工事で、真鶴の琴ヶ浜の景観は一変してしまい、現在もなお変わり続けています。ちょうど10年前だったと思いますが、真鶴の漁港および琴ヶ浜は国の推しすすめるある事業の指定をうけることとなり、海岸保全の名目で現在まで着々と整備が行われてきました。まず巨大な防波堤ができ、護岸工事がなされて海岸は舗装され、海に迫り出した磯料理屋は危険なので取り壊されました。取り壊された磯料理屋は現在、場所を移り新しい建物で営業しています。私個人的には以前の古めかしい磯料理屋のほうが、漁師小屋のような風情があって好きだったのですが。このように琴ヶ浜の自然に手をいれたおかげで、一見危なっかしかった自然の磯は、今は誰でも、子供でさえも海に近づきやすく改められています。シーズンの夏ともなれば、琴ヶ浜の海岸は海水浴やバーベキューなど、アウトドアを楽しむ人々でごったがえすようになりました。

 しかしその反面、防波堤ができたことや海岸線がなだらかに整備されたことは、確実に海の様子に、とくに海のなかの様子に影響していると思います。もっとも目につくのはやはりゴミで、潮の流れが変わり潮どおしが悪くなったのか、波打ち際にゴミが吹きだまることが多くなりました。浜辺には以前に増して、打ち上げられるゴミの数が多くなっています。あと、真鶴の海に何十年もかよう人がよく言うのですが、最近の琴ヶ浜にはノリがつかなくなったそうです。以前は冬場ともなればあたり一面に岩ノリがついたものなのですが、現在ではたしかに岩ノリの量も、そして質も変わってきている気がします。海藻がつかなくなれば、海藻に繁殖活動の大部分を依存しているサカナなどへの影響は避けられないでしょう。台風などによる、以前にはなかったような高波被害が、ここ10年間に頻発しているのも事実です。漁港からほど近いタクシー会社は台風によって、駐車場にあったタクシーのほとんどが浸水し廃車となっています。また真鶴マリーナでは、繋留されていたクルーザーなど多くが流されています。

 琴ヶ浜の巨大な防波堤の内側は半ば人工的なタイドプールになっていて、波や潮の流れもないので子供を遊ばせるには打ってつけでしょう。しかし、私はやはり、少し危なっかしくても荒々しい自然のままの磯が大好きで、幼いころに磯で傷だらけになって遊んでいたころをなつかしく思います。本来、海とは危険が多い場所です。父親の仕事柄、幼いころから海と接してきた私は、その海からとても多くのことを教わり、そして成長してきた気がします。私にとって海は心身をいやしてくれる友のような存在であり、また命の尊さを説いてくれるきびしい師でもあります。話は少々それますが、子育てを考えた場合、子供のまわりのいわゆる「危険」はハザードとリスクの2つに分けられるそうです。ハザードとは子供に害のある危険、言わば子供のまわりから取り除かれるべき危険であって、一方のリスクとは子供に益する危険、言うなれば子供の成長に必要な危険です。ともすると危険はすべて害として取り除かれる風潮が多い現代にあって、ハザードとリスクとの境界を見きわめる経験も必要ではないかと思うのですが。

 かつての、少なくとも10年前までの琴ヶ浜は、自然の磯が多く残された、荒々しくも美しい静かな海岸でした。歴史をひも解いてみれば、ここ琴ヶ浜は日本で最初のダイビングセンターができた、スクーバダイビングにとってはとても由緒のある海です。琴ヶ浜でここ10年間に行われてきた海岸環境整備事業、「自然との共生と豊かな海岸の創造」を名目とする事業はエコ・コースト事業と呼ばれています。この事業の指定には琴ヶ浜に隣接する真鶴漁港も入っており、現在はこの漁港沖に、これまた巨大な防波堤を建設する計画があります。エコ・コースト事業の「エコ」とはエコロジーのことでしょうか、はたまたエコノミーを指すのでしょうか。刻々と変わっていく琴ヶ浜の風景には喪失感を禁じえませんが、10年いや20年後には出されるであろう、この事業の結末を、そして結末までの課程をしっかり見つめていきたいと思います。
« 衣がえ | HOME | 伊是名島 »

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。